【安藤 昌益】あんどう しようえき
『別冊歴史読本』江戸人物ものしり事典<その5>学問・思想の指導者30人
中野三敏氏著(昭和54年当時、九州大学助教授)
その生涯は未だに明確ではない。元禄十六年(一七〇三)頃の生まれで、延享元年(一七四五)から二年間の八戸在住が確認され、宝暦初年ごろの五年間にその著述活動が集中している。通称孫左衛門。確竜堂良中とも称した。
農業を基本として万人直耕する一切平等の生産社会の実現を理想とする。上下尊卑といった価値観を徹底的に否定した
のは確かに幕藩体制に対する強烈な批判となり、その主著『自然真営道』百一巻が稿本のまま秘し隠されたため、同時代
における他への影響力は皆無に等しかった。このような思弁が、既成思想の中からいかにして纏めあげられたかを解くのが、今後の問題であろう。
主著に刊本『自然真営道』がある。また、著者の真価を示す稿本『自然真営道』百一巻は、関東大震災に殆んど焼失し、現存するのは十五冊にすぎない。宝暦十二年(一七六二)、秋田大館の二井田村に没する。