【奈良屋 茂左衛門】ならや もざえもん
『別冊歴史読本』江戸人物ものしり事典 伝記シリーズ 昭和54年 一部加筆
生年不詳。江戸に生まれる。姓は神田氏、名は勝豊、法名を安休という。
父茂左衛門は江戸の下町で車力をしていたというから貧家の出であった。材木屋に勤め二十八歳のとき独立して材木商をはじめた。日光東照官の修復工事にあたり、工事を安く落札し、不正を働いた小矛場町の木曽檜問屋の柏木伝右衛門を陥れてその木材を手に入れ、巨額の資産を積んだといわれる。
元禄年間(一六八八~一七〇四)材木商神戸彦七郎とともに飛騨の寺領山林の伐り出し工事を請負、幕府の御用商人としての地位を得、その後木曾山林の木材仕入れなどに手をひろげ、一代にして江戸有数の豪商となっ
た。
正徳五年(一七一五)病没したときの資産は十三万両という。この遺産は子の茂左衛門広璘(こうりん)が放蕩し奈良屋は没落した。