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Channel: 北杜市ふるさと歴史文学資料館 山口素堂資料室
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信玄堤 神々の逃走、神明社

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信玄堤 神々の逃走、神明社

『甲州街道』中西慶爾氏著 昭和47年 木耳社 一部加筆
 
信玄堤の長いながい雑木林が、信玄橋のたもとあたりで平野と接する境目に神明社がある。一宮浅間神社のお輿がやってくる由緒ある古社で、神宝にも珍らしいものがあるはずだが、社宝はいつの間にか何処かへ流散し。かんじんの
御神様がこれまた何処かへ逃走してしまった。
 白日のもとにさらされて拝殿が杖にすがりながら辛うじて佇っているみたいで、その荒廃ぶりはすさまじい。屋根は痛々しく破れ落ち、壁はあらかたくずれ飛んで、みるも無惨である。
 「平家物語」にある
「甍やぶれては霧不断の香をたき、枢(トボソ)おちては月常住の燈をかゝぐ」
という寂光院を引きあいに出したいところだが、そんななまやさしいものではない。
 さすがの神々も、雨風は防ぎがたく、空腹をかかえて、一夜ひそかに逃亡してしまったそうである。一応は出雲の大社へ行って相談したであろうが、そうは長居もできず、流浪の旅に出て幾年月、今でも杳(ヨウ)としてその行方がわからない。社宝も全く消息不明である。
 武田信玄によって安住を保証されたこの土地は、神様にとっても恰好な定住地であったろうが、星移り歳変ると、世間というものは、次第に住みにくくなるものらしい。それはここの神様だけといってはいられないようだ。

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