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武川衆 山高氏(『武川村誌』一部加筆)

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武川衆 山高氏(『武川村誌』一部加筆)
     一 山高氏の発祥
 鎌倉末期の甲斐守護、一条源八時信は、多くの子弟を巨摩郡旧真衣郷の諸村に分封し、いわゆる武川衆の祖となったことで知られる。
 時信は、次男与二義行の嫡男太郎信方を猶子として家督を伝えた。時信は甲斐守であったから、その猶子で摘男の地位にある信方は甲斐太郎と呼ばれた。南北朝初期の暦応年間には、一条甲斐太郎信方と名のった事実を次の『一連寺寺領目録』(抄記)によって知ることができる。
一、甲斐国一条道場一蓮寺領目録事
     合拾七町七反 屋敷二所
一、同国一条郷蓬沢内 田地壱町七反
     武田惣領源信武寄進
       貞和二年十月十三日(一三四五)
  1. 同郷内石坪并尻女子跡弐町斎藤彦三郎之継活却
     武田次郎信成寄進
       暦応四年八月十七日(興国二年 一三四〇)
一、同郷内一条七郎入道跡壱町大熊女子活却
     一条甲斐太郎信方寄進
       暦応二年二月三日(延元四年 一三三八)
一、同郷内壱町三反
     佐分弥四郎入道観阿寄進
     武田刑部大輔信成重寄進
       歴応二年六月 日(延元四年 一三三八)
一、同郷内朝毛弐町
     一条甲斐守信方寄進
       文和三年七月十七日(正平九年 一三五四)
一、経田九反 
     一条甲斐守信方後家現阿寄進
       貞治二年七月十日(正平十八年 一三六三)
           (中 略)
       貞治三年二月十五日(正平十九年 一三六四)
 
【筆註】 この時代は南朝(大覚寺統)方と北朝(持明院統)方で年号と年数が違う。記載は北朝年号。
 
この『一蓮寺寺領目録』は、貞治三年(一三六四)二月十五日現在のもので、すべて一九筆、うち三筆が一条信方およびその後家の寄進になるものである。最初が暦応二年(一三三九)寄進、次が文和三年(一三五四)、最後が貞治二年(一三六三)のものである。
 この三次の寄進に当たり、施主の名のりはすべて一条であって、山高の名のりはまったく見えない。では信方がこの年代
に山高の名のらなかったのかというと、『一蓮寺過去帳』には延文元年(正平十一年 一三五六)に歿した信方を「正阿弥陀仏 山高一代」と記しているから、信方が山高殿と呼ばれていたことは明らかである。
 また、永徳三年(一三八三)十二月二十一日に世を去った信方の嫡男信武を、同過去帳は「師阿弥陀仏 山高二代」と記している。
一条源八時信が嫡男総領信方ならびに諸子を武川の各地に封ずるにあたり、それぞれの封地名を名のらせ、自他の区別をした。すべて正式には一条氏であるが、互いに区別するために封地、拠点の地名で呼び合っていた。山高村に拠った一条信方は、山高一条殿、略して山高殿と呼ばれることになるのである。一条甲斐太郎信方は、武川の山高村に対地を受けて山高一代と呼ばれることになるが、前記『一蓮寺寺領目録』に見るように、一条郷朝毛(朝気・甲府市)付近に広い所領を有していた。
一条郷は盆地床部の低平な湿地帯を含む地域で、水害もあるが米の生産地帯で、豊かな集落が幾つもあった。
 これに対し、信方が新たに封を受けた武川山高村はどんな所であったか。山高は、読んで字のごとく、高燥な丘陵地である。鳳凰山の東、大武川の段丘上に立地し、東南に傾斜する地形で、氾濫原地域と異なり、水害の脅威が少なく、高燥でありながら水利に恵まれ、要害の地形は外敵を防ぐに足り、しかも大きい生産力を包蔵していた。
 したがって、鎌倉末期のころ、一条時信がその子弟を一条郷外の新天地に封じょうとするとき、最も有力な候補地と目され、一条氏族の総領、甲斐太郎信方を封じたのである。
 信方が、この山高の産神、幸燈宮に接して居館を構えたのが殿屋敷で、山砦を築いた所を栃平(とちだいら)といい、要害のよい場所である。ここを調べた荻生徂徠は轢平(どんぐりだいら)と記したが、当時、栃の木が茂っていたことであろう。轢の実も栃実も、ともにドングリと呼ぶのは、栃栗が転じたのだという。栃栗は食用になるので山砦の付近に植えて繁茂させておけば、籠城の際には兵糧のたしになり、凶作の年には救荒食物として重要なはたらきをする。山高氏が山砦を築いた当初に植えた栃の木が大木となって、栃平の地名をのこしたのであろう。
 

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