トスカ二-ニの耳
『対話の秘訣 はなしのタネになる本』東堀一郎氏編 光文書院 一部加筆
アメリカのNBC放送会社で、NBC交響楽団を編成したとき、ある事情で第一クラリネット奏者だけは水準より少し劣るが、さしかえることもできないまま、指揮者のアルツーロ・トスカニーニを迎えることになりました。
トスカニーニはイタリアのミラノからやって来る世界最高の指揮者ですから、楽団員に接する前に第一クラリネット奏者のことを言っておいた方がよい、と楽団の責任者でもあるサーノフ会長は思った。
ところがニューヨーク港へトスカニーニを出迎えると、会長が何も言わないのに「りっぱな交響楽団を編成されましたね、じつにりっぱです。だが第一クラリネットはいけませんね」というあいさつです。サーノフ会長はあわてた。トスカニーニはすでにミラノで短波の小型受信機で、NBC交響楽団のラジオ放送を聴いていたのです。トスカニーニはこのクラリネット奏者を取り除かないで、すぐその欠点を正すことにかかりました。そして世界第一流のクラリネット奏者に仕上げ、演奏会は大成功をおさめました。
『対話の秘訣 はなしのタネになる本』東堀一郎氏編 光文書院 一部加筆
アメリカのNBC放送会社で、NBC交響楽団を編成したとき、ある事情で第一クラリネット奏者だけは水準より少し劣るが、さしかえることもできないまま、指揮者のアルツーロ・トスカニーニを迎えることになりました。
トスカニーニはイタリアのミラノからやって来る世界最高の指揮者ですから、楽団員に接する前に第一クラリネット奏者のことを言っておいた方がよい、と楽団の責任者でもあるサーノフ会長は思った。
ところがニューヨーク港へトスカニーニを出迎えると、会長が何も言わないのに「りっぱな交響楽団を編成されましたね、じつにりっぱです。だが第一クラリネットはいけませんね」というあいさつです。サーノフ会長はあわてた。トスカニーニはすでにミラノで短波の小型受信機で、NBC交響楽団のラジオ放送を聴いていたのです。トスカニーニはこのクラリネット奏者を取り除かないで、すぐその欠点を正すことにかかりました。そして世界第一流のクラリネット奏者に仕上げ、演奏会は大成功をおさめました。