小林一茶と素堂
★『寛政日記』一茶 寛政五年(1793)の項の注釈に、
「仮名口決」
「仮名口決」を書寫したのはこの年の春である。「仮名口決」は無題筌の遺稿に編者が便宜上さう呼んでゐるのであるが、この書は素堂隠士から北窓翁竹阿に傳ったといふ「文字餘口決」及び「文字反シ口決」を一茶が筆寫し、例歌例句を挙げて補説したものである。例へば、万葉集東歌の、
たけばぬれたかねば長き妹が髪
の例歌に就いて
タゲバヌレハ誰寝レバ也。ガノ反シグト也、其グレヲ反セバケト也、是ニテ二重反シテ云。云々。
仮名口決(冩)
ア インウ エンヲ イン エン ウイン エン
カ キンク ケンク エイン エン ヲイン エン
サ シンス センソ キン ケン クキン ケン
タ チンツ テント ケキン ケン コキン ケン
ナ ニンヌ ネンノ 何レモ同ジ二ト四トテ
ハ ヒンフ ヘンホ 以律ヲ調フ故ニ自然ト
マ ミンム メンモ 其音轉ビイズル也
ヤ インユ エンヨ
ラ リンル レンロ
ワ ンウ エンオ
此書従素堂隠士北窓翁 翁堂三世也 予亦従翁學誹諧 故授故為秘蔵 今謹鹽之悉皆天地自然之道理也 學此道不可有不信聞説人者雖與鬼神斟豈為以智廬分別矣唯惜先哲而已 以不學何以至其域 雖然此書僅不越寸紙 因茲予加注釋以為小巻 欲令吾輩讀易慢不可漏脱
寛政五年春 一茶述