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Channel: 北杜市ふるさと歴史文学資料館 山口素堂資料室
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参考資料 北村季吟の墓(『日本随筆集』)

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参考資料 北村季吟の墓(『日本随筆集』)
 北村季吟の墓は、池の端茅町正慶寺にあり。昔年ゆきてみし事あり。その墓に、
花もみつほととぎすをもまちいでつこの世後の世おもふこよなき
              宝永二年六月十五日 八十二歳卒
 と彫り付けたり。このうた辞世の歌にはあらず。しかれども、季吟翁『疏儀荘の記』の末に、なお日ながき折は、鬼子母のおはす曹司谷(雑司ヶ谷)も遠からず、護国寺の大非者(だいひざ)のみまへにも、ただはひわたるほどなれど、老のあゆみのなおちかければ、新長谷寺にもうでて、不動尊の堂下より、西南にかたぶく日影に杖たてて、時知らぬ富士の白雪をながめ、千町(ちまち)田面(たのま)のみどりになびく風に涼みて、しばらくいきをのべつ。かくて、
 
     八十年来筆硯間 逍遥歌苑老心閑
     一望士嶺千秋雪 雲帯清風往又還
初かりのいなばにおつる声はあれどうれし田面になき郭公
花もみつほととぎすをも待ちいでつこの世の世思に事なき
 
 となんよみて疏儀荘に帰れば、日くれぬ。宵過ぎて月松の上にさし出てあきらけく、ここにはきょうみし花の色もみえず。鳥の声聞こえず。かの桐火桶の余薫、あるかなきかにものの端にとどまれり。宝永二年五月初(はじめ)つかた法印希吟口にまかせふんでにまます 云々

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