日本一の小男と大女
『歴史と旅』「特集日本史の謎50選」昭和53年6月号
延宝年間(1673~80江戸、大坂で見世物になった「頭大甫春」という大坂生れの小男がいた。年齢は三十歳ぐらいで、頭面は常人より肥大していたが、身長はわずか二尺二寸(約45cm)だが、なかなかの能筆で「鳩花心易」という易者をそらんじて吉凶をよく占ったというこの甫春と同じ見世物に、近江国堅田の生れの「およめ」という大女がいた。年齢は詳かではないが身長は七尺二寸(約2、64cm)あった。この二人についての文献は二、三あるので、多少の誇張があっても全くの虚説とはいえない。ちなみに、天和四年(1684)『好色古今男』の江戸堺町見世物評判の一条を紹介してみる。
「甫寿が背の高さ一尺二寸、およめが大きさ八尺、天井にとどく程に高くて色白ければ、鹿子まだら富士の如し。甫春は加僧にて、土人形の西行に似たり」この後も見世扮として小人や大女は何人となく出現しているが、この二人の大小記録を超えるものはなかった。(綬無名抄)