◇馬場美濃守信房 戦陣五つの信条
戦場常在
ある席で五、六人の若武者たちと語り合った。
「美濃守殿は二十一回も敵と組み討ちして、お屋形様からそのつど感状を戴いておりますが、一度も負けたことがないのはどうしてでございますか」
と問われた。
「それは運もある」
と前置きして、戦陣五つの信条を語って聞かせている。
一つ
敵より味方のほうが勇ましく見える日は、先を争って働くべし。味方が臆して見える日は、独走して犬死にするか、敵の術中にはまるか、抜けがけの聯を負うことになる。
二つ
場数を踏んだ味方の士を頼りにする。その人と親しみ、その人を手本としてその人に劣らない働きをする。
三つ
敵の附が吹き返しがうつ向き、旗指しもの動かなければ剛敵と知るべし。逆に吹き返し仰向き、旗指しもの動くときは弱敵と思うべし。弱敵はためらわず突くべし。
四つ
敵の穂先が上がっている時は弱敵と知るべし。穂先が下がっている時は剛敵。心を緊めよ。長柄の槍そろう時は劣兵。長短不揃いの時は士卒合体、功名を遂げるなら不揃いの隊列をねらうべし。
五つ
敵恒心盛んな時は、ためらうことなく一拍子に突っかかるべし。
戦場常在
ある席で五、六人の若武者たちと語り合った。
「美濃守殿は二十一回も敵と組み討ちして、お屋形様からそのつど感状を戴いておりますが、一度も負けたことがないのはどうしてでございますか」
と問われた。
「それは運もある」
と前置きして、戦陣五つの信条を語って聞かせている。
一つ
敵より味方のほうが勇ましく見える日は、先を争って働くべし。味方が臆して見える日は、独走して犬死にするか、敵の術中にはまるか、抜けがけの聯を負うことになる。
二つ
場数を踏んだ味方の士を頼りにする。その人と親しみ、その人を手本としてその人に劣らない働きをする。
三つ
敵の附が吹き返しがうつ向き、旗指しもの動かなければ剛敵と知るべし。逆に吹き返し仰向き、旗指しもの動くときは弱敵と思うべし。弱敵はためらわず突くべし。
四つ
敵の穂先が上がっている時は弱敵と知るべし。穂先が下がっている時は剛敵。心を緊めよ。長柄の槍そろう時は劣兵。長短不揃いの時は士卒合体、功名を遂げるなら不揃いの隊列をねらうべし。
五つ
敵恒心盛んな時は、ためらうことなく一拍子に突っかかるべし。