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江戸時代における武田遺臣

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江戸時代における武田遺臣
『山梨郷土史研究入門』山梨郷土研究会編 山梨日日新聞社 一部加筆
 
天正一〇年(一五八二)三月武田氏滅亡ののち、武田家遺臣の多くが徳川家康に属し、
他に北信濃を守っていた武士は越後の上杉景勝に属し、上州にいたものは織田信長の部将滝川一益に従い、同年六月本能寺の変後相模の北条氏直に属したもの、あるいは信州上田の真田昌幸に属したもの等々がある。
また浪人ののち、個々に近世大名の家臣に召抱えられたものもある。
 駒井右京進呂直・今福新右衛門昌常以下、信玄親族衆・譜代衆・惣家中衆、人数合わせて八九五人が、徳川家康に召抱えられたことはいわゆる「壬午起請文」によって知られるが、起請文に見えないもので家康に属したものもあろう。江戸幕府が成立すると、彼らは、幕府の旗本・御家人に組み込まれてゆくものもあるし、近世大名の家臣となって行ったものもある。
武田遺臣が比較的多く属している大名は水戸徳川家・尾張徳川家・彦根井伊家・犬山成瀬家である。

【水戸家】

水戸家は、家康が五男万千代すなわち武田信吾を水府一五万石に封ずる際、甲州武田とくに穴山の遺臣を集め附けられたこと、
尾張家は、家康の九子五郎太(義利のちに義直)が甲斐二五万石の領主となり、のちに尾張藩主となったが、転封に際して甲州の武士を連れて行ったこと、
井伊家は、家康が井伊万千代(直政)を武将としてとりたてる際、旧土屋衆・一条衆・原隼人衆・山県衆などの武田遺臣を付け与えたことによる。

【平岩主計頭親吉・成瀬隼人正正成】

犬山の平岩主計頭親吉ははじめ甲府城代であったし、成瀬隼人正正成の父吉右衛門正一は、家康の人質時代武田家に属したことがあり、勝頼滅亡後、家康の甲州入国の際、甲州将士糾合に奔走したことがあった。平岩・成瀬共に甲州の武士と関係が深かった。

【土屋惣三の子孫】

 近世大名になったものは多くないが、土屋惣三(右衛門尉呂恒)の子孫が常陸土浦藩主になっているし、

【武川衆】

のちに大名になったものに、もと武川衆の柳沢家(川越-甲府-大和郡山)、米倉家(武蔵金沢)がある。

【保科家】

会津の保科家(松平家)はもと信州の武士で信玄以来武田氏に属したものであるが、三代将軍家光の弟正之が保科家を継いだので以来親藩として重きをなした。

【真田】

真田昌幸の子信幸(信之)は信州松代藩主となった。
 近世大名の家臣となったものについては各藩の家臣の家譜や由緒書によって調べることができる。

【『井伊家、家士由緒書』】

例えば、正徳年間の『井伊家、家士由緒書』には、広瀬主殿(広瀬郷左衛門=美濃守子孫)、同脇内記(脇又一郎子孫)、同西山隼人(西山内蔵丞子孫)、内藤五郎左衛門(内藤修理亮子孫)など五一名の旧武田家臣の子孫の名が見える。彦根城築城の縄張奉行を勤めたのは早川弥三左衛門幸豊であるが、正徳年間井伊家には早川氏の子孫はない。甲州に帰って農村に住んでいる。

【尾張】 

 尾張については藩士の家譜を集めた『士林泝』がある。相原・跡部・雨宮・鮎川・石原・今井・今福・海野・大熊・小沢・小田切・小尾・小山田・木曽・橋田・日下部・小池・小菅・五味・三枝・志村・津金・辻・土屋・仁科・埴原・馬場・原・前島・曲淵・室賀・両角・山寺・米倉等、武田遺臣の子孫の家が数多い。

【米沢藩】『上杉家御年譜』の「御家中諸士略系譜」

 米沢藩については『上杉家御年譜』の「御家中諸士略系譜」があり、小幡下野守虎昌・市川治部少輔信房・保科豊後守正信その他、武田家臣を祖とする家、三十数家あり、中でも武田氏は、信玄の六男武田大膳大夫信清を祖とするもので、勝頼の妹菊姫が上杉景勝の室となった関係で上杉家に寓し、子孫が上杉氏に仕えた。
 会津藩主松平家の家臣となった内藤氏は、その祖内藤大和守昌月は保科正直の弟で内藤修理亮昌豊の養子になったもので、島原の乱後、昌月の孫源助自卓(よりたか)が一家数十人を率いて保科正之の食客となり、今津藩に披官したものであった。
 幕府の中には武田時代の代官、地方巧者が多く用いられ、佐渡金山奉行となった大久保長安が有名であり、甲州流軍学者で『甲陽軍鑑』を集大成した小幡勘兵衛景憲は小幡豊後守昌盛の三男である。
 なお、武田氏滅亡後、農村に留ったものは武田浪人として各村の指導者的地位を保った。 〔服部治則〕
 参考文献
『甲斐国志』士庶部
『寛永諸家系図伝』『寛政重修諸家譜』
村上直「家康と大久保長安」『日本人物史大系3
服部治則「武田家臣団組織と親分子分慣行」【農村社会の研究】御茶の水書房一九八〇
同「成瀬家における武田逮臣」『甲斐地方史の諸問題】甲斐史学、一九六五
同「内藤修押二売とその系譜」『甲斐の成立と地方的展開』角川書店一九八九
同「近世初頭における村落指導者層」甲斐路六〇一九八七
佐藤八郎「どこへ行く武田遺臣」雇史読本』武田信玄特集号

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