Quantcast
Channel: 北杜市ふるさと歴史文学資料館 山口素堂資料室
Viewing all articles
Browse latest Browse all 3088

甲斐源氏武田信義、逸見光長

$
0
0
甲斐源氏武田信義、逸見光長
資料『大泉村誌』「第三編大泉村の歴史」第二節甲斐源氏の勃興と谷戸城他一部加筆。
黒源太清光がすばらしい子宝に恵まれ、それぞれの子を逸見荘より国中地方へ進出させ、いずれも要衝を占有させて武力を培かわせたことが、鎌倉時代から室町時代の武田氏、更に室町末期の戦国時代に勇名を轟かせた、信虎、信玄、勝頼の〝武田三代"へと発展していくことにたるのであるが、甲斐國に拓げる武田の始祖となった信義と甲斐源氏本宗ともいうべき逸見茂を継いだ光長は、『尊卑分賑』によると「同日同胞の二児」となっており、しかも、ともに源氏の長男の称号である「太郎」を号しているところから、世にいう、「二人太郎」すなわち光長、信義は双生児であったとの説が生まれたのである。
『尊卑分賑』〈清和源氏義光流、逸見・武田〉の条によると、光長については「上総介、逸見太郎、母」とあるだけで、父母の素性等にはまったく触れておらず、一方信の項は「逸見冠者清光の子也、逸見太郎光長同日同胞二児出生、ヨッテ両人共、太郎ト号ス、逸見太郎光長ハ巳時、信義ハ午刻誕生」と記し、信義の場合についてだけ「母手輿遊女」と明記している。
この両者にかかわる記述から推して二人は同胞ではなく、その生母は別人であったろうと考えられるようになった。特に清光が光長に嫡家たる逸昆氏を継がせ、一方の信義には新領ともいうべき武田荘(韮崎市内)を与えている点を考えれば、明らかに光長は嫡出子としてその処遇を受け、信義の母は清光の側室推論するのも不自然なことではない。手輿は現在の静岡市手越で、往古は東海道の宿駅であった。当時、平氏・源氏が交替で京都内禁裏守護の任(大番制度という。ただし制度化されたのは鎌倉時代)にあったころのことであり、清光が大番出役で京に向かう途中、手輿の宿駅に立ち寄っていたとしても不思議ではない。のちに武威に優れる武田信義が本宗たる逸見光長を凌駕して甲斐源氏の指導権を握る存在となり、鎌倉幕府創設の最大の功労者となったことから、遊女所産という信義の譜に書き直しの作為があったのではなかろうか(広瀬広一氏『武田信玄伝』)と指摘されるようになった。
ところで光長、信義ともに出生年月の記述はなく不明であるが、『吾妻鑑』には「武田信義は後鳥羽天皇の文治二年三月九日、不遇なうちに死去した」と没年について触れており、また信義の菩提寺となっている韮崎市神山町・願成寺の寺記に「太公、文治二丙午年三月九目、武田ノ館ニテ悶々ノウチニ死去、享年五十九、遺骸ヲ寺内ニ収メ願成寺殿峻照國大禅定門トス」とあるところから、逆算すれば大治三年(一一二八)の出生とされ、また八月十五日誕生とする書もある。さきの『尊卑分脈』にある光長の出生が已時とあるのは現在の午前十時ごろの出生ということになる
逸見光長
甲斐源氏の本宗たるべき逸見氏を継いだ光長についての記録はほとんど見られず・わずかに『吾妻鑑』〈治承四年十月十三日の条〉に「(前略)また甲斐國の源氏、ならびに北条殿父子、駿河国に赴く(中略)武田太郎信義・次郎忠頼・三郎兼信・兵衛尉有義・安田三郎義定・逸見冠者光長・河内五郎義長・伊沢五郎信光らは、富土の北麓若彦路を越ゆ。ここに加藤太光貞.同藤次景廉は、石橋合戦以後、甲斐国の方に逃げ去る」との記述があり、少なくとも光長は甲斐源氏の一員として源頼朝の源氏再興時に活躍していた痕跡を認めることができるのであるが、これ以後の消息を知るすべはない。
『甲斐国志』にも光長に関する確たる記述はなく、ただ『尊卑分脈』によると、光長の系譜には太郎基義(本名義経改め)、三郎義長(またの号深津四郎)、義俊(皇嘉門院判官代)、五郎保義らの子を記しており、逸見本家は基義より
惟義-義重-惟長-義隆-隆継-隆信へと受け継がれていったことを記している。
さきの『吾妻鑑』の記述に見られるように、甲斐源氏については武田信義、その子次郎忠頼(一条氏)らのあとに逸見光長の名をあげており、すでに甲斐源氏の本宗は逸見氏から武田氏に移っていたように受け止めることができる。光
長についての史料が見出せない以上、甲斐源氏の実権がどんな理由で信義の手に移ったかを知るよしもないところであるが、あるいは両者の武将としての素質の上で信義に一日の長があったからとも考えられる。研究者の間には智謀、統率力などの点で信義がはるかに光長を超え、総領職の座に着いたとの説もあるが、これとても推測の域を出るものではない。

Viewing all articles
Browse latest Browse all 3088

Trending Articles



<script src="https://jsc.adskeeper.com/r/s/rssing.com.1596347.js" async> </script>