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富士山湧出 甲斐國志

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富士山湧出甲斐國志巻之三十五 従五位下伊豫守定能編輯----山川部第十六ノ上都留郡----
「神社考」に曰、
----孝安天皇九年十二年六月、富士山湧出、初雲霞飛來如穀聚云々依之後に「穀聚山」とも称する。山形平地に穀を盛るが如くなればなり、故に穀を量るに升を以ってするに准らへ、山路を測る称号とすると云う。
富士山 甲斐國志巻之三十五 従五位下伊豫守定能編輯----山川部第十六ノ上都留郡----
 
郡ノ西南に当り南面は駿河に属し、北面は本州に属す。
東南は大行合(八合目)より東の方、大天井、小天井、それより下りて「七ツヲネ」
それより「天神峠」見おろし「かご(籠)坂」へ下る事百五間、
又東南へ下る事二丁三拾七間にして、甲駿の国界たり。
西は「藥師カ嶽」より「無間谷」、「三ツ俣」それより、長山ノ尾崎に下り、「三ヶ水」、「狐ヶ水」、裾野に至りて「裂石(われいし)」まで、また甲駿ノ國界ナリ。
八合目より、頂上に至りては、両国の境なし。東南、籠坂峠より西北「裂石」に至るまで裾野の間、拾三里故に古へより「駿河の富士」とは云えども、七分は本州の山なり。
天正五年武田勝頼、浅間明神への願書に古人云。三州に跨ると雖も、過半は甲陽の山なり、とあるはこれなり。(古より三州に跨る諸記にあれども、実は二州のみ)
登山路の北は、吉出口、南は須走口、村山口、大宮口の四道なり。そのうち須走道は八合目に至て「吉田道」と合す。
故にこの所を「大行合」と云う。村山道、大宮道に合す。故に頂上に至ては唯南北二路なり。南面を表とし、北面を裏とすれども、古より諸園登山の族人は北面より登る者多し。故に北麓の村落吉田、川口二村に師職ノ者数百戸ありて、六七両月の間参詣の族人を宿せしむ。これにて案内者を雇ひ、これに旅具等を持たしむ。
吉田より「鈴原」まで三里、道険ならず故に馬に跨(またが)り登山する。
まず、「山役銭」として参詣の旅人より、師職共百二十文請け取る(古は二百四十四文なりしとぞ、今はその半減なりと云う。この内不浄祓いの料三十二銭、役行者堂二十銭。(賽銭)
「中宮」三十二文、(内十六文は休息料)。
「薬師が嶽」、二十文。(内十四銭は大宮の神主、六銭は吉田の師職)
古へは、この役銭を領主に上納せしとぞ。天正十八年十一月十五日、領圭加藤作内より與へし文書に
----不二(富士)山御改に付き河尻氏に被卯付候。以先書訴之條の如く先規爲、道役料、青鋼四貫文、師職共慥(たしか)に上納爲其記、刀一慨棄光作寄附於神前可帯之委細者可爲前々事----
とあるは是也。「採薬小録」に駿河大納言様山の道法御改の節、上 吉田村 鳥居より御改の由、富士の山上まで、吉田よりおよそ三百五拾七町七間半ありとぞ。この鳥居は浅間社中五丈八尺の大鳥居の事なり。
<日本武尊>甲斐國志巻之三十五 従五位下伊豫守定能編輯----山川部第十六ノ上都留郡----
(前項文に続き)是より登山門を出て、松林の間を南行すること三町ばかり左方に、一堆丘あり。大塚と称す。塚上に小祠あり、「浅間明神」を祭る。土人相伝え云う、上古日本武尊(やまとたける)東夷征伐の帰路、道を甲斐國に取り、富士を遥拝したまえし地なり。後世、塚を築きその徴とし、上に小祠を建るとぞ。口碑に伝わる歌あり
----あつまち(吾妻路)のえみし(蝦夷)をむけしこのみこ(御子)の 御威稜にひらく富士の北口----
是よりして北口の道は開けしとぞ。甲斐國志巻之三十五 従五位下伊豫守定能編輯----山川部第十六ノ上都留郡----
<七合目:聖徳太子・駒ヶ岳>
甲斐國志巻之三十五 従五位下伊豫守定能編輯----山川部第十六ノ上都留郡----
七合目この間小屋およそ九軒。この辺りより道益々急なり。「駒カ嶽」と云う所に小屋あり。
「聖徳太子の像」並「鋼馬」を安置する。
新倉村如來寺兼帯す「太子略伝」に云う。
----推古帝六年夏、四月、甲斐國貢一驪駒、四脚白者、云々。舎人調子麿加之飼養、秋九月試馭此馬、浮雲東去、侍従以仰観、麿獨在御馬有、直入雲中、衆人相驚、三目之後、廻レ輿帰来、謂左右曰、吾騎此馬、瞬雲凌霧、直到富士嶽上、轉到信濃、飛如雷電、経三越、竟今得----
按ずるに、この古事を以って「駒カ嶽」と云いて、太子を安置せるあり。
 

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