貞享3年 丙寅(1686)素堂45才
◇ 素堂、『蛙合』仙化編。発句一入集。衆議判に加わる。
雨の蛙聲高になるも哀哉 素堂
古池や蛙飛びこむ水のおと 芭蕉
《註》この古池やの句の最初の五は、「山吹や」であった。
魯庵の『桃青傳』によると、この句成立に関しての話として、
「甲斐國巨摩郡鳥澤・犬目両村の間に、三家塚といふ坂があって、その坂の上の桑畑の側に小池がある。口碑によると、こゝで芭蕉が古池やの句を詠んだのである」といふが之も信じがたい。(『芭蕉の全貌』萩原蘿月氏著より)
《註》十月五日、野波、許六宛書簡。
翁の古池の句貴丈ならでは聞得るもの天下になかるべきよし。然るに今天下
に名句といふ事は、俳諧せぬ者も申候。
素堂も四句の名句の内に撰出し候事、集御覧にて御存あるべく候。云々。
(『芭蕉の全貌』萩原蘿月氏著より)
《註》本間家の記録。
(前略)鹿島詣の草稿、山口素堂十三夜の文を芭蕉の清書したもの、其他一品都合三點を吐花侯へ進上した。なほ本間家には伊賀餞別一巻・深川ノ夜・芭蕉及び越人の附句一巻・阿弥陀坊前文発句一福・素堂亭集残り発句一幅云々。