▽素堂と芭蕉の親交
川上と川下や月の友 芭蕉
芭蕉の次の句は素堂と親交を示すものとして諸書に紹介されている。
深川の末、五本松に舟を浮かべ月を賞で
川上と川下や月の友 芭蕉
▼『七部通旨』に
「五本松は東都深川小名木川通り、大島にあり、九鬼家の邸中より道路を越へて水面を覆ふ古松をいふ。昔しは五株ありと云。今は其一株を存す」とある。
▼『蓼太句集』にも
深川舟逍遥
十人の月見の友よ松ひとり
とある。芭蕉の畏友素堂が、川上に當たる葛飾に居を占めてゐたことから、この句は専ら素堂を対象としたものとして解されてゐるが、云々。 (芭蕉七部集『俳句鑑賞』川島つゆ著)