十三夜のお月さん 北杜市武川町 口碑・伝説
『武川村誌』一部加筆
昔、柳沢に小池くまさんと、小池いまさんという老婆がいた。この人たちは、旧暦の一月十三日のお月さんが西にそびゆる駒ヶ岳の北隣り、鞍掛山に没する場所によって、その年の豊凶を占うという珍しい信仰者であった。
そのやり方は、大きなだんごを棒にさして柳沢の「トヨの柿の木」という地名の場所にきて十三夜のお月さんが鞍掛山に没する時刻に、一心にお祈りをする。
お月さんが鞍掛山の高い所に沈むとその年は日照りつづきで稲作は豊作であるという。また低いところに沈むと雨天の日が多くて、大洪水もあり稲作は凶作であるというのである。したがって低いところへ沈んだ年には、早生の稲を作れば、良いというのである。このようなやり方で毎年同じ場所にきて、お祈りをするのだそうである。
これがまた、珍しくあたるので、段々と信者が増えて大勢の人が「トヨの柿の木」の所に集まって、この行事をまねるようになったということである。
今では、この人たちのまねをする人が少なくなってしまった。ちなみに、鞍掛山には、大日大聖不動明王が祀ってある(高齢者ふるさと学級編)。