抜粋
五人組は、古代の五保の制にならって制度化した近世庶民の隣保組織で、はじめはキリシタン・浪人取締に活用されたが、のちには法令の遵守・貢租の完納・治安維持などのための、連帯責任による相互監察と相互扶助的機能を重視するようになった。
五人組帳は、五人組御仕置帳という。五人組の遵守すべき法令を前書に列挙し、村役人およびすべての五人組員が連署連判して、法令に違犯したい旨誓約した請書をつげた帳簿である。
◇ 新地の寺社建立の儀、堅く停止たるべく候。惣べて月次の念仏・題目の石塔・供養塚・庚申塚・石地蔵の類、田畑山林又は道路の端、新規に一切立てまじく候。仏事・神事・祭礼等は軽くこれを執り行い、新規に祭礼を取り立つべからざる事
◇ 寺杜の儀、住持・社人替り侯はば、注進すべき事
◇ 神仏開帳致し候はば注進すべし。当村の神仏、他国へ当分相移り、開帳仕り候儀これ有らば、前方注進すべし。
又は他所より神輿を送り来り候様なる儀これ有らば、請け取るべからず。村の中に少しの間も指し置き申すまじき事
◇ 当村にこれ有り候、出家・社人・山伏・行人・道心者又は非人等、其のほか穢多のたぐい、常々吟味致し候て、うろんなる者住居仕らせまじく侯。
名主・組頭へ相達し、他村より来り候者ニ仮の宿も仕らせざる様に、右の者共へ申し付くべき事
◇ 当村の者の内、或は立ち退き、或は逐電し、或は身上潰し候て住居成り難きものこれ有らば注進すべし。
又は他より子細これ有り、立ち退き来り候もの、親類たりというとも当村に一切差し置くまじく候事
◇ 他所の者当村に有り附き、住宅仕り度しと願い候者は、其の者の出所、家職の様子聞き届け、出所の村方名主へこれを届け、慥かなる請け人手形、これを取り、宗門の旨相改め、詮義を遂げ候て差し置くべし。店借り、地かり等の者置き候儀も右同前と相心得べき事
◇ 他所へ参りて二夜泊り、罷り出で候程の儀は、名主に断り罷り出ずべし。若し他国へ出で候か、又は用事候て相越し候はば、其の子細を名主・長百姓・五人組へ書付を以て相断るべし。公事訴訟に公儀へ出候共、其の趣を名主・長百姓・五人組へ相届くべき事
◇ 行方知れざる者に一夜の宿も貸すべからず。旅人其のほか何者によらず、堂・宮・山林・道路に死人これ有らば、其の者の持ち来たり候雑物等相改め、名主・組頭立ち会い、様子を委細書付けにて注進すべし。堂・宮・山林に隠れ忍び、胡乱なる者有らば詮義せしめ、品々により搦め捕り、これを訴うべし。其のほか手負又は不審たる者、他所より来たり候はば出所を尋ね、付け届け致し、注進の上差図を請け候て彼の者を出だすべき事
◇ 御林御立山の竹木は勿論、枝、柴、下草等迄、公用のほか伐り採るまじく候。たとい下草銭出だし候て刈り取る所たりとも、苗木刈り取り候様なる儀致すべからず。御林のす(透)き候所へは苗木植え立て候様に仕るべく候。百姓の持林並びに屋敷の四壁のきわも、目立ち候木を伐り遣わし候わば、先ず書付を差し出しこれを伐るべし。堤にこれ有り候草・葭等、刈り取るまじき事
附たり、新規に堤に植えものいたすべからず。堤の際切り欠き、植えもの仕るまじく侯事
◇ 入会の野山、面々の持山にても、草木の根掘り取るまじく、鶴嘴を入れ候儀、停止たるべし。田畑へ山崩れの砂入る事(以下散逸する)
◇ 往来の輩、若し相煩い候はば、早速医者に見せ、随分養生致し能よくいたわり、食い物など念を入れあたえ、看病仕り置き、これを注進すべし。行歩叶わず、先へ参り候儀成り難く候わば、其の者の在所を承わり届け、迎えを呼び手形を取り相渡し遣わし申すべく候。
若し病死致し候はば、其の者の道具等を改め、名主・長百姓立会い、封印を致し置き、指図を受くべき事。