甲斐の白嶺(しらね)
『甲斐名勝志』 萩原元克編 天明三年(1783)一部加筆
「かひがね」とも、「かひのしらね」という名所なり。此山四時雪有り、駿河の国大井川の源は此山中より出る。
古今 よみ人しらす
かひかねをさやにもみしかけゝれなくよこほりふせるさやの中山
同 和泉式部
甲斐かねをねこし山こしふく風を人にもかもやことつてやらん
後拾遺 紀伊式部
何方とかひのしらねはしらねとも 雪ふることに思ひこそやれ
続後撰 蓮生法師
かひかねははや雪しろし神無月 しくれて過るさやの中山
新千載 大江茂重
雪つもるかひのしらねをよそに見て はるかに過るさやの中山
御集 後鳥羽院
雪しろきかひのしらねのさゝの庵 やとれる袖にやとる月かけ
玉葉 定家
かひかねに木の葉吹しく秋風も 心の色なえやはつたふる
新拾遺 寂真法師
甲斐かねは猶いかはかりつもるらん はや雪しろしさやの中山
夫木 信實
春のてる霞をみれはかひかねのね わたしにこそたな引にけれ
同 順徳院
かひかねは山のすかたもうつもれて 雪のなかはにかゝるしら雪
家集 壬生忠岑
惜からぬ命なれともけふまては、つれなきかひのしらねをもみつ