七不思議(甲斐七不思議) 兎園小説(瀧澤馬琴)
寛政三年、甲斐国に六奇異あり。遠江に一奇異あり。合わせて七奇異とす。当時ある人の消息に云く、
一、甲州善光寺の如来。當春二三月汗かき、寺僧両人づゝにて日夜拭ひ候事。
一、甲州切石村百姓八右衛門家の鼠、大さ身一尺餘、為猫之聲候事。
一、右村より一里許山に入石畑村に而、馬為人話候事、尤一度切りにて後無其事。
一、同八日市場村切石村荊澤村にて、牝鶏各化為牡鶏候事。
一、同東郡一町田中邊三里四方許之間、五月雹降り深さ三尺餘、鳥獣被打殺候事。
一、同七面山鳴御池の水濁渾候事。
一、遠州豊田郡月村百姓作十郎方の鍬に草生候事、刃先より三寸、一本枝十六本、如杉形三日にて花を開、似桜花枝木花共に皆鍬のかねなり。
寛政三年、甲斐国に六奇異あり。遠江に一奇異あり。合わせて七奇異とす。当時ある人の消息に云く、
一、甲州善光寺の如来。當春二三月汗かき、寺僧両人づゝにて日夜拭ひ候事。
一、甲州切石村百姓八右衛門家の鼠、大さ身一尺餘、為猫之聲候事。
一、右村より一里許山に入石畑村に而、馬為人話候事、尤一度切りにて後無其事。
一、同八日市場村切石村荊澤村にて、牝鶏各化為牡鶏候事。
一、同東郡一町田中邊三里四方許之間、五月雹降り深さ三尺餘、鳥獣被打殺候事。
一、同七面山鳴御池の水濁渾候事。
一、遠州豊田郡月村百姓作十郎方の鍬に草生候事、刃先より三寸、一本枝十六本、如杉形三日にて花を開、似桜花枝木花共に皆鍬のかねなり。