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甲州の和算家 関流と『算法通書』

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甲州の和算家 関流と『算法通書』
甲州の和算家 弦間耕一氏著『文学と歴史』 第6号 一部加筆
甲州の関流と算法通書
 八代郡塩田村の岩間孫兵衛、同八代郡市川大門村の小沢久右衛門については、「文学と歴史」の三号で紹介した。
 今度、はからずも『算法通書』という、和算書を見る機会を得た。「算法遺書」では、岩間孫兵衛、小沢有隣の外に、関流の和算を深く学んだ、三井識右衛門、中村卯書などの人物が存在したことがわかった。
 天保三年(1832)版が出た『古今算鑑』に、『算法通書』の紹介が載っている。(『古今算鑑』は重版された)
 
算盤を学ぶ法則をはじめ、諸数の名義より八算見一の詞ハもとより、乗除に至るハ候毎に、註を加へ手を取て、引くが如くなれバ、師を求めて学ぶに異ることなし、乗除定位又相場割ハ一術を学ぶときハ、百千万の法を悟る、其解義を詳かにす、其鹸差分、えいしく、求積、開方、開立方、胸股弦容術、天元、点竄(テンサン)に至るまで、術毎に起源を明かにする故に、初学の士此書に因るときか、おのづから数学のうん奥に至る人も多かるべし、
 
『算法通書』
上、中、下の三巻に分かれ、上巻で初歩的なもの、中巻で中級、下巻に高等数学を載せている。
 註釈を加へ、手を引くが如く親切に編集されているから、この書で学べば、独学であっても、和算を身につけることができる。さらに、術の起源も明示してあるので奥義を究めることも可能であると記している。
 売ることを目的にした紹介の文言であるから、すぐにも和算が上達できるような感じを受ける。寺子屋で『塵劫記』を学んだ者でも、この『算法通書』の下巻が一通り、理解できるようになるには、おそらく十数年の歳月を必要としたと思われる。
 『算法通書』は、安改元年(1854)に、関流の総師である長谷川弘の門人、古谷道生が著わした。
 道生は、定吉又は、節右衛門と称し藤岳と号した。駿河志田郡下水田村の生れである。幼年の頃に、駿河国田中の岩本傭兵衛に学び、後に長谷川弘の門下に入った。
 『算法通書』は、一説には、長谷川弘の編著であるともいわれる。
 この『算法通書』の下巻には、附録の部分がある。そこに長谷川弘の門人や古谷道生の門人が、設題している。
出題者は三十一人で、道生の門下八人、道生の師であった岩本源兵衛の門下が六人。道生、源兵衛関係は、駿河在住者で占められている。この算書は、江戸小伝馬町、山崎巌清七蔵版で出版されているが、どうも門人の動向からみると、道生は、この頃、駿河に住み、和算を教えていたと思われる。
 甲州の岩間孫兵衛、小沢有隣、三井織右衛門、中村卯吉らが、出題したものもこの付録にある。
 設題を具体的に知ってもらうために、原本をそのまま次に掲げてみたい。
 甲州の関流四人の実力が評価され、『算法通書』に設題を許されたものである。設題の内容を、山梨県教育センター、数学科研究室の研修主事堀江完二先生に、依輸して検討してもらったところ、現代の学校教育の程度からすると、中学校三年から高等学校で学ぶ課程であるとのことであった。堀江先生からは、懇切な指導を受けたが、基礎学力の不足があって消化できなかった。設題では、a・b・c・x・y・zの代わりに、甲・乙・丙・子・丑・寅などを使い式を表わした。
 和算では、四人の設題のように、図形を材料として、その部分の長さを求めたり、面積や体積を求めたりするものが多かった。
 和算は、論証を主とする幾何学ではなかった。むしろ、図形を代数的に扱うことにあった。設題に示されるように、いくつかの円や三角形を接触させている。こうした問題を容術といった。一般に、容術は複雑な問題を出す傾向があった。
 和算の世界で、特徴的なことは、円の研究が、中心の課題になったことに注目すべきである。江戸時代の初期に、今村知商が『竪亥鮮』で一六三九年に、円の弧を求めている。さらに、関孝和によって発展の基礎がつくられる。孝和の門人建部賢弘は、西洋の微積分学に相当するようなものに高めていった。

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