素堂 五月、『桃の實』発句一入集。兀峰編。
富花月 艸庵に桃櫻あり、門人にキ角・嵐雪有
両の手に桃とさくらや草の庵 芭蕉翁
菓子盆に芥子人形や桃の花 其角
桃の日や蟹は美人に笑るゝ 嵐雪
かゝる翁の句にあへるは、人々のほまれならずや、おもふに素人
の句は、青からんものをと人はいふらん。思ふらん。
しろしとも青しともいへひしの餅 兀峯
躑躅咲うしろや闇き石燈籠 桃隣
冷酒にのみつく比かもゝの花 曲水
綿の花たまく蘭に似たる哉 素堂
例の素堂の感情、蘭よくとの風雅にこそ
【註】『桃の實』備前国岡山藩士兀峯が江戸勤番の暇に編んだ集。