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大淀三千風、甲斐入り

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大淀三千風、甲斐入り              

寛永十六年(1639)生、~宝永四年(1707)歿。              
年六十九才。伊勢国射和(いざわ)の商家に生まれる。
三十才頃まで家業に従事するが、寛文九年(1669)三十一才の時俳諧師となるために陸奥国松島に赴き、仙台に十五年滞在する。
延宝七年(1679)二千八百句独吟の矢数俳諧に挑戦して成就する。
天和三年(1683)『日本行脚文集』の旅に出る。
元禄二年(1689)までの七年間全国津々浦々を歩き、元禄三年(1690)に『日本行脚文集』を刊行する。
 
身延詣(抜粋)貞享三年(1686)
 三千風はこの間貞享三年(1686)に富士から大宮を通過して、身延山久遠寺に立ち寄り、七面山に登り、当住持日脱上人と歓談し、
肉團のかをり颪は身延かな
その峰の鷲の尾につくみのぶ山うへみぬ法の古集成りけり
その後四日間逗留して、甲府柳町伴野氏を訪問し、八日間留まる。
 
善光寺で興行、天神畫像に、
梅神の毛虫秡や下枝風
 是にて満座せし。
 当所酒折天神は連歌の濫膓なり。往古日本武尊東夷征伐の時の行宮なり。甲府の連宿一萬句奉納その発句を金板に冩し、巻頭の句をして小序をつけて書と所望せられ、ぜひなくかき侍りし、其発句、序は略。
 
かをりけりおほふて外なき翅梅        三千風
凉風に常冬見するしら根哉                             仝
暑を譲る幾曙か松がねか            安貞
雲水の客人は暑の□なし          森氏  一峰
そなれ波の松島衣夏もなし      内田氏  吉堅
みち風の秡しまゝに水無月           一任
俳風かをれは端山に蝉のを聲もなし   禰津  松聲
夏桃や三千てふ人の鄙裏        高橋  安信
晝顔翁夜は咄その月咲り             奥野  昌信
凉風や月を求食て三千ほ             牧野  宗山
花あり實あり眞夏の園の桃翁     加賀美  三盆
譽り蝉心なり無我翁          伴ノ  長行
白根の夏の芭蕉衣を除てふけ      高橋  安春
名ぞ茂る宗祇二代の宮城萩       金沢  好元
夏富士や手につけまはす放下僧     奥野  好興
 
いざや信玄公舊城を見めと人々誘引て行。昔の形まさしくのこり、築地礎花園の畔、塘の獨梁、かしこは櫓、富士見の御殿、かばかりあせはてにし事の悲しさに、さすがに名将の餘波いまだ靈威のとゞまればや、野飼の牛馬も石垣のうちへ有ゆるさずとなむ。
夏葉や有し富士見の玉の床
かくて甲府を立、さし出の磯、鹽の山、鵜飼寺を見て、かの信玄公菩提所、乾徳山恵林寺に案内して、荊山老和尚の謁し、旅行のはふれをはらす。云々
 
《註》石氏三寂、一任
三千風は恵林寺を後にして、大月猿橋を過ぎ八王子に入る。連衆の中に見える石氏三寂、一任は医師で、素堂が元禄八年に甲斐に入り、府中の妻の実家と思われる外舅野田氏宅に寄宿した。その折に素堂を招き興行した人である。

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