『甲斐寺記・神社記』『巨摩郡北山筋吉沢村太寧寺由緒書』の項には、再開基、武田信玄之将士馬場美濃守、法号 乾叟自元大居士とあるが、この寺は度重なる火災で書き物の全てが灰になったという。これは、白須から織田信長の追手を逃れ、一時吉沢村（甲府市）に住み、その後朝気町に住んで居た馬場信房の後裔と思われる馬場彦左衛門家の記に
「馬場美濃守の子供の孫、馬場民部の子供丑之介が「壬午の乱」を避け、その母とともに、北山筋平瀬村（甲府市）に隠匿し、時代が落ち着き、本村（朝気村）に移居して馬場與三兵衛とあらためる」とある。
また同系の馬場祖三郎家に伝わる由緒書には、
『馬場祖三郎家由緒書』
開基馬場美濃守源公
法号 乾叟自元居士
公七世外孫出家 得法同牛込御龍山松原禅寺向陽院惟庸字古同敬書
信州槙嶋（まきのしま）城主、甲国武田旧臣新羅（三郎義光）后胤馬場美濃守源公諱信房
始称 敬禮師民部少輔
諱 政光
天正三年乙亥五月二十一日。
六十三歳、或作四。
役于参州拾長篠西北之向瀧川橋場自殺。従者斎遺骨少帰州 臺原（台ケ原）墓石朱地或云、
武川之白須村於自元寺以佛古又祭法号如前面矣聞 自元之神儀弊壊 新之贈寺且欲迎其壊於家而仰鎭護也。
柳營 幕下小臣 居武州豊嶋郡大塚公五世胤馬場喜八郎義長 旧名義教 拜自
【筆註】
この文書は甲府桜町「開峡櫻」の主人馬場祖三郎氏（当時）の古文書に見えるもので、白須自元寺に納められている。馬場祖三郎氏は『馬場彦左衛門家』の家系に繋がる。また、自元寺は天保十四年（１８４３）に現在地に移つると棟札に見える。