日本陸軍 軍歌集
日本陸軍 大和田 建樹作詞 深沢 登代吉 作曲
一 出陣
天に代りて不義を討つ 忠勇無双のわが兵は 歓呼の声に送られて
今ぞ出で立つ父母の国 勝たずば生きて還らじと 誓う心の勇ましさ
二 斥候
あるいは草に伏し隠れ あるいは水に飛び入りて 万死恐れず敵情を
視察しかえる斥候兵 肩に懸れる一軍の 安危やいかに重からん
三 工兵
道なき方に道をつけり 敵の鉄道うち毀ち 雨と降りくる弾丸を
身に浴びながら橋かけて わが軍わたす工兵の 功労なににか誓うべき
四 砲兵
鍬取る工兵助けつつ 銃とる歩兵助けつつ 敵を沈黙せしめたる
わが軍隊の砲弾は 放つにあたらぬ方もなく その声天地に轟けり
五 歩兵
一斉射撃の軒先に 敵の気力をひるませて 鉄条網も物かはと
躍り絶えたる塁上に 立てし誉の日章旗 皆わが歩兵の働きぞ
六 騎兵
撃たれて逃げ行く八方の 敵を追い伏せ追い散らし 全軍のこらず打ち破る 騎兵の任の重ければ わが乗る馬の子の細く 栄(イタ)わる人もあるぞかし
七 輺(し)重兵
砲工歩尊の兵強く 連戦連勝せしことは 百難冒し輸送する
兵糧輺重のたまものぞ 忘るな一日おくれなば 一日たゆとう戦力を
八 衛生隊
戦地に名誉の負傷して 加収容せらるる将卒の 命と頼む衛生隊
ひとり方の兵のみか 敵をも隔てぬ同仁の なさけ思えば君の恩
九 凱旋
内には至仁の君いまし 外には忠武の兵ありて わが手に握りし戦勝の
誉は正義のかちどきぞ 謝せよ国民大呼して わが陸軍の勲功を
十 平和
戦雲東におさまりて 昇る朝日ともろともに かがやく仁義の名も高く
知らるるアジアの日の出国 光りめでたく仰がるる 時こそ来ぬれいざ励め